Yasuto
Nakahara
________Chef

重大ニュース発表

今日は、前回にひきつづき収穫月12年間の歴史を振り返り、重大ニュースを発表したいと思います。

ベスト5から...
「ピアノの貴公子 やすと・クレイダーマン 現る」
10周年記念でシェフのピアノの先生に無理矢理頼んでゴスペルコンサートを開催してもらいました。(プリマヴェーラという美女4人グループ)そのとき「シェフもピアノを弾きませんか」と言われ、いつものように調子にのって一曲弾くことに。

約半年前から練習していたにもかかわらずピアノの前に座った瞬間、頭のなかが真っ白に。とりあえずなんとか最後まで弾きましたがボロボロでした。ほんとあの時はすいませんでした。やはりシェフは音楽的センスはゼロだと証明されました。

続いてベスト4...
「恐怖の停電事件」
夏の暑いディナーの真っ最中、いきなりのゲリラ豪雨と雷により突然店が停電に。しかもまだお客様が2組おり、さぁどうする。あたふたするシェフにマダムは冷静にロウソクと懐中電灯を持ってきて、これで最後までやってと。運良く2組ともあとはメイン料理を残すだけとなっていたので懐中電灯を頭にくくりつけ、肉を焼きました。

しかし、だんだん冷房が切れているので暑くなり、ほんと地獄でした。それでも最後のコーヒーまで飲んでいただきありがとうございました。ほんと12年間やっているといろんなことがあります。「何事も備えあれば憂いなし」です。

いよいよベスト3...
「収穫月、バブル再来か?」
オープンして7年目ぐらいの時、いきなり「費用はいくらかかってもいいので料理を作ってくれ」というオファーがありました。まるで夢のような話でバブルの再来かと思いました。話をよく伺うとフランス通の某会社会長(当時90歳くらい)がどうしても収穫月で食事をしたいとのこと。

しかし、いざいくらかかってもいいと言われてもそれはそれで困りました。とりあえず一人5万円ぐらいを想定し、ワインもそれ相応のもの、高級食材をあちこちから調達し、キャビア・トリュフ・フォワグラはもちろんのこと、オマール海老・松坂牛・アワビ・・・と。あとにも先にももうこんなことはないと思いますが。

そして、いよいよ当日、来店されたご老人は紋付袴姿で気合い十分。1本何万円もするワインをガバガバ飲み、総入れ歯なのにフランスパンを食べまくり、えらい盛り上がってました。会長夫妻と娘夫婦の4人でしたが、また夫人が上品でどこかの皇族の方かと思いました。後から聞いたのですが、娘婿の方はかなり偉い官僚の方だとか。

そして完食した会長さんは疲れたみたいで、いきなり椅子を並べて横になりはじめ、この時ばかりは食べ過ぎてこのまま天国に召されるのかと思いました。いよいよ会計、マダムが「こちらになります」と会計表を出すとご夫人が封筒を取り出し「じゃあ、これで」「おつりはいいですから」と、おつりといっても何万円もなるじゃあないですか!ほんと毎日来てくれたらいいのにと切に願いました。

その後1、2回来店され、何回か出張サービスもしましたが5年ぐらい前から連絡が途絶え、高齢ですし本当に天国に召されたのかなぁと思いつつ、あの時どうしてもっと高い値段設定をしなかったのかと日々後悔しております。でも、本当に料理人冥利に尽きる出会いでした。もし亡くなっていたとしたら線香の一本でもお供えしたいと願っております。

かなり長くなりましたので、ベスト1と2は次回に...