Yasuto
Nakahara
________Chef

プロジェクト M 〜悩み多き者たち〜

シェフは行き詰まっていた...
つくづく自分はものづくりに向いていない...

「収穫月10周年特別メニュー」を早急に作るようにとマダムからの度重なる脅迫じみた指令で精神的・肉体的に限界を感じていた。(ここから中島みゆき「地上の星」を BGM で流してください)

そのとき一条の光明が差した、「あの素材だ」。
以前からいつ使おうかと温めていた素材、数ある海の幸のなかでも王者と呼ぶにふさわしい格別の食材、星付きのレストランのメニューでしかお目にかかれないあの "オマール海老" 、しかも最高級として名高いブルターニュ産... 通称「オマール・ブルトン」である。

オマール海老は、副材料との組み合わせの相乗効果によって10のものが20にも30にも引き上げられる。そんなオマール海老の潜在的な旨味を呼び覚ましてくれるもうひとつの素材、それは初夏に旬を迎えるきのこ「モリーユ茸」。フレッシュなものを食べることができるのはこの時期だけである。

そして最後に必要なものは、男性的で王道を行く調理の「力」。歴史に残る偉大なシェフたちの技法、表現力に敬意を払い基本に忠実に自然体でのぞみたい。

ブルターニュ地方

ブルターニュ地方

オマール海老の最高級として名高いブルターニュ産... 通称「オマール・ブルトン」。7月〜12月にかけて雌は産卵期に入り、その前の 5〜8月にコライユ(みそ)を豊富に蓄え最高のオマール・ブルトンが獲れる。

オマール海老料理において絶対欠かせないのがこの「コライユ」。そして、殻・身・内臓と素材のすべてを使ってこれほど完璧なソースができる魚介はオマール海老以外にはない。