Yasuto
Nakahara
________Chef

勝男武士

目には青葉、山ホトトギス、初鰹。
これほど日本人にとって季節の訪れを告げるとともに日本の食文化を支え続けてくれた魚はない。初鰹より脂の乗った戻り鰹の方が好きという人もいるが、江戸っ子は初鰹は女房を質に入れてでも食えと言ったぐらいやはり初物はいい。

まんが「サザエさん」のなかでカツオは間違いなくサザエさんと並ぶ主役級の存在で「サザエさん」における笑いはカツオを中心に展開している。つまりカツオあっての「サザエさん」なのである。

太平洋の海原を自由に回遊する鰹と「サザエさん」でいつもクール、いたずら好き、でもどこか憎めない愛すべきキャラのカツオくんに共通するのは「自由な生き方」。この時期になると僕はカツオになりたいと思う。どちらのカツオでもいい。

初夏の収穫月のオードブルで「初鰹の瞬間燻製」というメニューがある。本来、カツオのタタキは藁で燻し焼くものだからカツオと燻製の相性は良いはず。それもほんの一瞬、サッと燻製をかけるだけで中はほとんど生の状態。それにグレープフルーツ、新玉ねぎ、空豆などを合わせる。ソースはブラックオリーブのソース。ハーブとオリーブとレモン、酒盗を少し入れるのがポイント。カツオの切身に粗塩をサッとふるのもお忘れなく!

勝男武士

鰹節からとれる一番だしは上品で繊細な味つけの日本料理には欠かせない。でもなんといっても「カツオのタタキ」。

最近、高知の知人から聞いたのだがポン酢ではなく塩で食べるらしい。やはり新鮮で美味しいものは塩だけで十分。

ちなみに枕崎ではカツオの心臓のことを「珍子(ちんこ)」と呼ぶらしい。今宵もきっと枕崎では美しい女性が居酒屋で「珍子ください」と元気にオーダーしていることだろう。なんて素敵な街なんだろう、あぁぜひ一度行ってみたい。